映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』
あらすじ・ネタバレ・感想

映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のポスター1

画像引用元: IMDb

もし、何者にでもなれるとしたら、あなたは何になる? パイロット、医者、弁護士…? 1960年代、そんな夢をすべて、しかも10代のうちに実現してしまった少年がいた。

ただし、すべて“嘘”で。

映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は、FBIの「重要指名手配犯」リストに名を連ねた天才詐欺師フランク・アバグネイルJr. の、驚くべき実話を描いた物語だ。

スティーブン・スピルバーグ監督が、レオナルド・ディカプリオとトム・ハンクスという二大スターを迎え、嘘とユーモアに満ちた、最高にクールな“追いかけっこ”をスクリーンに描き出す。

本記事では、あらすじから登場人物、そしてネタバレ解説まで、掘り下げていく。

1.映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の作品情報


映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のポスター2

画像引用元: IMDb

タイトル キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン(Catch Me If You Can)
監督 スティーヴン・スピルバーグ
公開年 2003年
キャスト レオナルド・ディカプリオ, トム・ハンクス 他
ジャンル ドラマ, クライム

2.映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のあらすじ


物語は1960年代のニューヨーク。

高校生のフランク・アバグネイルJr.は、尊敬する父と、美しいフランス人の母と共に、何不自由ない幸せな家庭で暮らしていた。

しかし、父親の事業の失敗をきっかけに、彼の幸福な日常は崩壊。

両親の離婚という現実にショックを受けたフランクは、16歳で家を飛び出してしまう。

孤独と貧しさの中、彼が生き抜くために見出した唯一の武器は、「人を騙す」才能だった。

ある日、街で颯爽と歩くパンナム航空のパイロットたちが、絶大な信頼と尊敬を集めていることに気づいたフランク。

彼は、その身分を偽ることを思いつく。

巧みな話術と度胸でパイロットになりすました彼は、偽造した小切手を武器に、世界中を無料で旅しながら、数百万ドルもの大金を手にしていく。

その後も、小児科医や敏腕弁護士など、次々と華麗な変身を遂げ、その大胆な詐欺の手口はFBIをも翻弄する。

そんな彼の前に立ちはだかったのが、偽造小切手専門のFBI捜査官カール・ハンラティ。

地道で真面目な捜査官カールと、神出鬼没の天才詐欺師フランク。

二人の長い、長い追いかけっこが、今、始まる。

3.主要な登場人物とキャスト


  • フランク・アバグネイルJr.(演:レオナルド・ディカプリオ)

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    主人公。

    悪意なき天才詐欺師。

    父親の愛情と、失われた家庭を取り戻したいという一心で、嘘の人生を突き進む。

  • カール・ハンラティ(演:トム・ハンクス)

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    フランクを追う、実直なFBI捜査官。

    仕事一筋で、家庭を顧みない不器用な男。

  • フランク・アバグネイルSr.(演:クリストファー・ウォーケン)

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    フランクの父親。

    事業に失敗し、プライドを打ち砕かれた男。

  • ブレンダ・ストロング(演:エイミー・アダムス)

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    フランクが医者になりすましていた病院で出会う、純粋な看護師。

    フランクが初めて本気で愛し、詐欺師稼業から足を洗うきっかけとなりかける。

4.映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のネタバレ

※ここからは映画の核心に触れるネタバレを含みます。





この映画は、スリリングな犯罪劇であると同時に、二人の孤独な男たちによる切ない友情の物語でもある。

・天才詐欺師の誕生:父への思慕

フランクが詐欺を始めた動機は、金銭欲ではない。

それは、事業に失敗し、妻にも去られた父に、もう一度成功した姿を見せたいという、歪んだ親孝行の形だった。

彼が手に入れた大金も、豪華な車も、全ては父に認められ、両親が復縁し、失われた幸福な家庭を取り戻すための小道具に過ぎなかった。

しかし、父のプライドは既に打ち砕かれ、フランクが望む結末は決して訪れない。

この埋められない渇望が、彼をさらに大きな嘘へと駆り立てていく。

・追う者と追われる者の奇妙な絆

この物語の真の主役は、フランクとカールの関係性だ。

当初はただの「犯罪者」と「捜査官」だった二人の間に、奇妙な絆が芽生えるきっかけが、クリスマスイブの電話だ。

世界中を飛び回り、華やかな生活を送るフランクだったが、聖なる夜に電話をかける相手は、自分を追うカールしかいなかった。

一方のカールもまた、離婚し、娘にもなかなか会えない、孤独な仕事人間。

彼は、毎年かかってくるフランクからの電話を、呆れながらも待つようになる。

二人は、追う者と追われる者という関係の中で、互いが唯一、本音で話せる相手となっていたのだ。

・つかの間の“普通”の幸せと、その終わり

フランクは、弁護士になりすまし、婚約者ブレンダとの“普通”の人生を歩もうとする。

しかし、彼の過去はそれを許さない。

婚約パーティの会場にカールたちが迫り、彼はブレンダを残して、再び逃亡生活に戻るしかなかった。

彼が本当に欲しかったのは、偽りの肩書ではなく、愛する人と共に過ごす平凡な日常だったのだ。

・逮捕、そして“第二の人生”

ついにフランクは、母の故郷であるフランスの小さな町で、カールに逮捕される。

数年の服役後、カールはフランクの類まれなる偽造技術を見抜き、FBIの偽造小切手捜査の職員として彼を雇うことを提案する。

監視付きのオフィスワークに退屈したフランクは、再びパイロットの制服を着て逃亡を図る。

しかし、空港で彼を制止したのはカールだった。

「どこにも行く所はないだろう」と。

その言葉に、フランクは自分が本当に帰るべき場所を悟る。

週明け、彼はカールの待つオフィスへと戻ってくる。

それは、二人の長い追いかけっこが終わり、本当の意味での「第二の人生」が始まった瞬間だった。

5.映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の補足情報

驚くべき実話がベース

本作は、フランク・W・アバグネイルJr.本人が執筆した自伝小説が原作となっている。

映画で描かれるエピソードの多くは事実に沿っているが、カール・ハンラティというキャラクターは、複数の捜査官をモデルに創作された、映画オリジナルの人物である。

巨匠と二大スターの豪華なタッグ

スティーブン・スピルバーグ監督、レオナルド・ディカプリオ、トム・ハンクスという、まさにドリームチーム。

当初、ディカプリオは別の監督の下で本作の企画を進めていたが、スピルバーグが監督に就任したことで、トム・ハンクスの参加も決まったという。

象徴的なオープニングアニメーション

60年代の雰囲気を伝える、スタイリッシュなオープニングアニメーションは非常に評価が高い。

Saul Bass(ソール・バス)といった伝説的なデザイナーへのオマージュであり、追う者と追われる者の関係性を暗示する、優れた短編作品となっている。

フランク・アバグネイル本人もカメオ出演

映画のクライマックス、フランスでフランクが逮捕されるシーン。

ディカプリオ演じるフランクを連行するフランス人警官の一人を、なんとフランク・アバグネイルJr.本人が演じている。

自分の半生を描いた映画で、自分自身を逮捕するという、粋なカメオ出演だ。

6.映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』の感想

孤独な天才が駆け抜けた、クールな青春物語

『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』は、何度観ても色褪せない。

軽快なジャズのサウンドトラックに乗って、テンポ良く展開する詐欺の手口は、観ていてとても小気味良い。

レオナルド・ディカプリオが放つ、人を惹きつけてやまないスター性とカリスマ性は、まさに天才詐欺師フランクそのものだ。

しかし、この映画が単なる犯罪コメディで終わらないのは、その華やかな物語の根底に、一貫して「孤独」と「家族愛」という切ないテーマが流れているからだろう。

フランクは、決して悪人ではない。

彼はただ、バラバラになった家族を取り戻したかっただけの、寂しい少年なのだ。

その心の叫びが、クリスマスの夜、彼を追う唯一の人間であるカールへと電話をかけさせる。

そして、トム・ハンクス演じるカールの存在。

彼は、フランクにとっての「追跡者」であり、同時に、彼がずっと求め続けた「父親」のような存在でもあった。

二人の間に芽生える奇妙な友情こそが、この映画の本当の心臓部だ。

スティーブン・スピルバーグ監督の、シリアスさとユーモアを巧みに織り交ぜる演出手腕も完璧。

観る者をワクワクさせながらも、ふとした瞬間にフランクの孤独に胸を締め付けられる。

これは、派手な嘘で固めた天才詐欺師の、最高にクールで、少しだけ悲しい青春物語なのだ。

まとめ

本記事では、映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』を、あらすじからネタバレ、トリビアに至るまで徹底的に解説してきた。

この映画は、我々に問いかける。

肩書きや制服が、どれほど人の認識を簡単に変えてしまうのか。

そして、嘘で固めた華やかな人生の果てに、本当に欲しいものは何なのかと。

軽快なジャズの音色と共に、天才詐欺師の孤独と、彼を追い続けた男の温かさを描いた、最高にクールな傑作である。