映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』
あらすじ・ネタバレ・感想

映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のポスター1

画像引用元: IMDb

ヒーローは、力によって生まれるのではない。

その心によって、選ばれるのだ。

2011年に公開された『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』は、アイアンマンやソーといった強力なヒーローたちが集う「アベンジャーズ」計画において、なぜスティーブ・ロジャースという一人の兵士が、その“心臓部”であり“リーダー”たり得るのか、その理由を描き切った、MCUの原点と言える物語である。

舞台は1940年代、第二次世界大戦の真っ只中。

一人のひ弱な青年が、ただ「正しいこと」をしたいという一心で、人類の希望を背負う最強の兵士へと変貌していく。

本記事では、あらすじからキャスト紹介、そして物語の核心に迫る完全ネタバレ解説まで、掘り下げていく。

1.映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の作品情報


映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のポスター2

画像引用元: IMDb

タイトル キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー(Captain America: The First Avenger)
監督 ジョー・ジョンストン
公開年 2011年
キャスト クリス・エヴァンス, トミー・リー・ジョーンズ, ヒューゴ・ウィーヴィング, ヘイリー・アトウェル, セバスチャン・スタン 他
ジャンル アクション,SF

2.映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のあらすじ


物語は1940年代初頭、第二次世界大戦が激化するアメリカから始まる。

ブルックリンに住む青年スティーブ・ロジャースは、誰よりも強い愛国心と正義感を持っていたが、病弱で、あまりにも小柄な体格ゆえに、何度も入隊検査で不合格となっていた。

「悪を決して許さない」という彼の不屈の精神に目を留めたのは、軍の科学者エイブラハム・アースキン博士だった。

博士は、スティーブこそが、ナチスの脅威に対抗するために軍が進める「スーパーソルジャー計画」の被験者にふさわしいと見抜く。

アースキン博士とハワード・スターク(アイアンマンの父)の導きにより、スティーブは実験に参加。

彼の身体には血清が投与され、特殊な光線を浴びせられる。

その結果、ひ弱だったスティーブの肉体は、人間の潜在能力を極限まで高めた「完璧な兵士」へと生まれ変わった。

一方、ヒドラを率いるヨハン・シュミット(レッドスカル)は、北欧神話に隠された神秘の力「コズミックキューブ」を手に入れ、世界征服の恐るべき計画を実行に移そうとしていた。

スティーブ・ロジャースは、星条旗のシールドを手に、「キャプテン・アメリカ」として、ヒドラとの全面戦争に身を投じていく。

3.主要な登場人物とキャスト


  • スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ(演:クリス・エヴァンス)

    映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のポスター1

    画像引用元: IMDb

    主人公。

    ひ弱だが、決して屈しない正義の心を持つ青年。

  • ペギー・カーター(演:ヘイリー・アトウェル)

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    画像引用元: IMDb

    秘密科学予備軍(SSR)所属の敏腕エージェント。

    スティーブの肉体ではなく、その「心」に惹かれた唯一無二の女性。

    彼女の存在が、スティーブの精神的な支柱となる。

  • ジェームズ・ブキャナン・“バッキー”・バーンズ(演:セバスチャン・スタン)

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    画像引用元: IMDb

    スティーブの幼なじみにして無二の親友。

    ひ弱なスティーブを守る兄貴分だったが、二人の立場はスーパーソルジャー計画によって逆転する。

    彼の存在が、後のMCUに大きな影を落とすことになる。

  • ヨハン・シュミット/レッドスカル(演:ヒューゴ・ウィーヴィング)

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    画像引用元: IMDb

    ナチスの科学部門「ヒドラ」の首領。

    コズミックキューブの力で世界征服を企む、本作のヴィラン。

4.映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のネタバレ

※ここからは映画の核心に触れるネタバレを含みます。



本作は、MCUという壮大な物語の基盤を築いた、重要な物語である。

・「強い兵士」ではなく「善人」を

本作の核心は、アースキン博士がスティーブを選んだ理由にある。

「スーパーソルジャー計画」の最初の被験者(レッドスカル)は、血清の力に心を支配され、怪物となった。

だからこそ、博士は最強の肉体を持つ者ではなく、最強の「心」を持つ者を探していた。

訓練キャンプで、スティーブだけが手榴弾(ダミー)から仲間を庇おうと身を挺したシーン。

あそこですべてが決まった。

「弱い者は、力の価値を知っているからだ」。

この哲学こそが、アイアンマンやソーといった、力を持ってしまったがゆえに傲慢になりがちなヒーローたちとは一線を画す、キャプテン・アメリカの原点である。

・「偶像」から「英雄」へ

実験成功後、唯一のスーパーソルジャーとなったスティーブは、軍の広告塔「キャプテン・アメリカ」として、戦争債券募集のためのUSO(米軍慰問団)ツアーに駆り出される。

タイツ姿で舞台に立ち、子供たちの前でパンチの真似事をする。

彼は「偶像(アイドル)」であっても、「英雄(ヒーロー)」ではなかった。

彼が真の英雄となったのは、親友バッキーが所属する107連隊がヒドラに捕らわれたと知り、軍令を無視して単身敵地へ救出に向かった時だ。

彼はそこで初めて「キャプテン・アメリカ」として戦い、バッキーを含む多くの兵士を救い出す。

この成功が、彼を兵士たちの真のリーダーへと押し上げた。

・バッキーの死と、最後のダンスの約束

ヒドラとの戦いの中で、スティーブは最大の代償を払う。

高速列車での戦闘中、彼は親友バッキーを失ってしまうのだ。

スティーブが過去と繋がる唯一の絆であったバッキーを失ったことは、彼の心に深い傷を残す。

そして、彼に残された最後の絆が、ペギー・カーターだった。

二人は互いに惹かれ合いながらも、軍人として一線を越えずにいた。

しかし、最終決戦の前夜、二人は戦争が終わったらダンスホールで再会することを約束する。

この「ダンスの約束」こそが、彼の人間性の象徴だった。

・英雄の犠牲と、70年後の目覚め

クライマックス、レッドスカルの野望は阻止されるも、暴走する爆撃機は、ニューヨークへ向かい続ける。

スティーブに残された道は一つ。

彼はペギーに無線で別れを告げ、彼女とのダンスの約束を胸に、爆撃機ごと北極の氷の海へと身を投じる。

彼が目覚めたのは、70年後の現代、ニューヨークのタイムズスクエアだった。

戦争は勝ち、世界は救われた。

しかし、彼はその代償として、愛する人、親友、そして自らの「時代」のすべてを失ったのだ。

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』というタイトルは、「最初の復讐者」だけではなく、「最初の犠牲者」という意味も内包している。

だが、手術のために連行される直前、彼はシーアン医師にこう問いかける。



5.映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の補足情報

MCUの時系列上の“始まり”

本作は、MCU映画としては5作目だが、物語の時系列としては(古代のプロローグを除けば)全ての始まりの物語である。

ここで登場した「コズミックキューブ」は、後の『アベンジャーズ』でロキが狙う「インフィニティ・ストーン(スペース・ストーン)」であり、MCUの壮大なサーガの幕開けを告げる重要アイテムとなった。

監督ジョー・ジョンストンの作風

本作の監督ジョー・ジョンストンは、1991年に『ロケッティア』という、同じく1940年代を舞台にしたレトロフューチャーなヒーロー映画を監督している。

そのノスタルジックな作風と、第二次世界大戦という時代設定への造詣の深さが、本作のクラシックで温かみのある雰囲気を生み出した。

伝説の作曲家アラン・メンケンによる「劇中歌」

スティーブがUSOツアーで歌い踊る、あの陽気なキャンペーンソング「Star-Spangled Man」。

この曲を作曲したのは、なんとディズニー・ルネサンスを支えた伝説の作曲家、アラン・メンケン(『リトル・マーメイド』『アラジン』)である。

完璧なまでに「当時のプロパガンダソング風」に作られたこの曲が、映画のリアリティを一層高めている。

時代遅れのヒーロー

スティーブが70年後に目覚めるという結末は、原作コミックの初期設定(氷漬けになる)を踏襲している。

「現代に蘇った、高潔だが時代遅れの男」という設定こそが、皮肉屋のトニー・スタークや、神であるソーといった他のアベンジャーズとの対比を生み出し、チームのドラマを豊かにする上で不可欠な要素となった。

6.映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』の感想

  

『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』は、派手なVFXが飛び交う現代のスーパーヒーロー映画の中で、本作はあえて1940年代の戦争映画という、古風なスタイルを貫いている。

この映画の本当の凄さは、「強さ」ではなく「正しさ」をヒーローの原点に据えたことにある。

アイアンマンが「天才的な頭脳と富」で、ソーが「神としての血筋」でヒーローになったのに対し、スティーブ・ロジャースは、その「高潔な心」一つでヒーローに選ばれた。

この映画は、派手さはないが、MCUという巨大な世界を支えるための、最も重要で、最も強固な「土台」を丁寧に作り上げた。

もちろん、批判的な見方をすれば、レッドスカルというヴィランの描き方は、ややステレオタイプな「映画的ナチス」の域を出ていないかもしれない。

彼の動機は純粋な支配欲であり、後のMCUヴィランのような複雑な背景は希薄だ。

しかし、本作の主役はあくまでスティーブ・ロジャースという男の「心」の物語。

彼がなぜヒーローなのか、その一点を描くことにリソースを全振りしたからこそ、この映画は観る者の心を打つ。

彼は、アイアンマンのように空を飛べず、ハルクのように全てを破壊できず、ソーのように雷も呼べない。

しかし、彼だけが、アベンジャーズを「チーム」にすることができる。

なぜなら、彼だけが「弱い者」の痛みを、誰よりも知っているからだ。

まとめ

本記事では、映画『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』を、あらすじからネタバレ、トリビアに至るまで徹底的に解説してきた。

この映画は、我々に教えてくれる。

真の強さとは、筋肉やパワーではなく、いじめっ子に立ち向かい、正しいことのために身を投げ出す「勇気」なのだと。