映画『キャプテン・マーベル』
あらすじ・ネタバレ・感想
アベンジャーズが誕生する遥か以前、1990年代。
そこには、後にニック・フューリーが最強チームを結成するきっかけとなる、一人のヒーローが存在した。
映画『キャプテン・マーベル』は、MCUフェーズ3のクライマックス『エンドゲーム』直前に公開され、サノスを倒し得る「切り札」の誕生を描いた、極めて重要なオリジン・ストーリーだ。
同時に、90年代のノスタルジー溢れるカルチャーと、記憶を失った主人公が「本当の自分」を取り戻すまでを追った、ミステリー仕立ての物語でもある。
本記事では、このMCUのヒーローの原点を、あらすじからキャスト紹介、そして物語の核心に迫る完全ネタバレ解説まで、掘り下げていく。
1.映画『キャプテン・マーベル』の作品情報
| タイトル | キャプテン・マーベル(Captain Marvel) |
|---|---|
| 監督 | アンナ・ボーデン, ライアン・フレック |
| 公開年 | 2019年 |
| キャスト | ブリー・ラーソン, サミュエル・L・ジャクソン, ベン・メンデルソーン, ジャイモン・フンスー, リー・ペイス, ラシャーナ・リンチ 他 |
| ジャンル | アクション,SF |
2.映画『キャプテン・マーベル』のあらすじ
物語の舞台は、1995年。
銀河の列強国である「クリー帝国」の精鋭特殊部隊「スターフォース」の兵士として活躍する、ヴァース。
彼女は、恐るべきパワーを持つ一方で、過去の記憶を一切失っており、謎の女性(マー・ベル)が登場する悪夢に悩まされていた。
ある日、ヴァースは宿敵である変身型エイリアン「スクラル」との戦闘中、敵の罠にはまり、未知の惑星「C-53」(地球)へと墜落してしまう。
彼女が不時着したのは、ロサンゼルスのレンタルビデオ店「ブロックバスター」の屋根だった。
地球で彼女が出会ったのは、まだ片目を失う前の若き日のニック・フューリー。
S.H.I.E.L.D.のエージェントであるフューリーは、当初はヴァースを不審人物として扱うが、彼女を追って地球に侵入したスクラルとの遭遇を通し、宇宙の脅威を初めて目の当たりにする。
ヴァースは、自らの記憶の断片を手掛かりに、スクラルの真の目的と、自身の過去を探るミッションを開始する。
しかし、その先に待っていたのは、彼女の信じていた世界そのものを覆す、衝撃的な真実だった。
3.主要な登場人物とキャスト
- キャロル・ダンヴァース/ヴァース(演:ブリー・ラーソン)
主人公。
クリー帝国のスターフォースの兵士。
驚異的な力を秘めるが、過去の記憶がない。
- ニック・フューリー(演:サミュエル・L・ジャクソン)
S.H.I.E.L.D.の若きエージェント。
キャロルとの出会いが、彼のその後の人生を決定づける。
- タロス(演:ベン・メンデルソーン)
スクラル人のリーダー。
変身能力を駆使し、S.H.I.E.L.D.の長官ケラーになりすまし、キャロルたちを追い詰める。
- ウェンディ・ローソン博士/マー・ベル(演:アネット・ベニング)
キャロルが悪夢の中で見ていた謎の女性。
彼女こそが、キャロルが力を得るきっかけとなった、クリー人の科学者「マー・ベル」だった。
4.映画『キャプテン・マーベル』のネタバレ
※ここからは映画の核心に触れるネタバレを含みます。
『キャプテン・マーベル』の物語は、MCUの根幹にも関わる、重要な物語である。
・敵はどちらだったのか
ヴァース(キャロル)は、自分が所属するクリー帝国こそが正義であり、変幻自在のスクラルは宇宙を脅かすテロリストだと信じていた。
しかし、地球でタロスと対峙し、自らの過去を追う中で、真実は全く逆であったことを知る。
悪の帝国は、クリー帝国だったのだ。
スクラル人は、クリーによって故郷の星を追われ、銀河をさまよう難民だった。
タロスたちスクラルが探していたのは、クリーの科学者マー・ベルが開発した、スクラルを救うための「光速エンジン」だった。
そして、マー・ベルは、ヨン・ロッグによって殺されていたのだ。
・キャロルの力の起源と、偽りの記憶
キャロルの力の源も明らかになる。
彼女は、マー・ベルの光速エンジン実験機のテストパイロットだった。
ヨン・ロッグの襲撃からエンジンを守るため、キャロルは自らエンジンを撃ち抜き、爆発。
その際、彼女はエンジンの中枢にあった四次元キューブ「(スペース・ストーン)」のエネルギーを全身に浴び、強大なパワーを得ると同時に記憶を失ったのである。
ヨン・ロッグは、記憶を失った彼女を「ヴァース」というクリー人の兵士として洗脳し、6年間も騙し続けていたのだ。
・最強のヒーローの覚醒
全ての記憶を取り戻したキャロルは、自らの力を制御するのではなく、解放することを決意する。
クリーのAI(スプリーム・インテリジェンス)が作り上げた精神世界で、ヨン・ロッグは彼女に「私がいなければ、お前はただの人間だ」と告げる。
しかし、キャロルは立ち上がり、こう宣言する。
「私は、あなたに証明するものはない(I
have nothing to prove to you)」。
彼女は、自らの意志で首元の制御装置を破壊。
エネルギーは全身にみなぎり、彼女は「バイナリー・フォーム」へと覚醒。
宇宙空間で、クリーの艦隊を単身で殲滅する、文字通り「規格外」のヒーローが誕生した瞬間だった。
・「アベンジャーズ」計画の始まり
本作は、ニック・フューリーのオリジン・ストーリーでもある。
彼はこの一件で、地球外の脅威と、それを上回るヒーローの存在を目の当たりにする。
そして、彼は猫のグース(その正体は、危険な宇宙生物フラーケン)によって、左目を失う。
ラスト、キャロルという希望に触発された彼は、「地球を守るための計画」の名称を、キャロルの戦闘機の愛称だった「アベンジャー」から取り、「アベンジャーズ計画」と命名するのだった。
5.映画『キャプテン・マーベル』の補足情報
MCU初の単独女性ヒーロー映画
20作を超えるMCUの歴史の中で、本作は初めて女性ヒーローが単独で主役を務めた作品となった(『アントマン&ワスプ』は厳密にはW主演)。
完璧な90年代の再現
ブロックバスタービデオ、アルティメット鉄拳、NINE INCH NAILSのTシャツ、Windows 95の起動音、No
DoubtやNirvanaの楽曲など、全編に渡って1990年代のカルチャーが散りばめられており、当時の空気感を完璧に再現している。
驚異の「デジダル・デエイジング(若返り)」技術
本作では、サミュエル・L・ジャクソン(当時70歳)と、フィル・コールソン役のクラーク・グレッグ(当時56歳)が、全編にわたって25年前の姿で登場する。
そのVFX技術は、ほとんど違和感のない、驚異的なレベルに達していた。
監督は二人組(アンナ・ボーデン&ライアン・フレック)
本作の監督・脚本を務めたのは、『ハーフネルソン』などで知られるアンナ・ボーデンとライアン・フレックのコンビ。
MCUで初めて女性監督(アンナ・ボーデン)がメインでメガホンを取った作品ともなった。
6.映画『キャプテン・マーベル』の感想
『キャプテン・マーベル』は、これまでのMCUヒーローとは、その在り方が根本的に異なる作品だ。
トニー・スタークは自らの傲慢さを、スティーブ・ロジャースは自らの弱さを「克服」することでヒーローとなった。
しかし、キャロル・ダンヴァースは違う。
彼女の物語は、「抑圧からの解放」と「自己受容」の物語だ。
彼女は、師であるヨン・ロッグから、常に「感情をコントロールしろ」と抑えつけられてきた。
しかし、彼女が本当に覚醒したのは、コントロールを捨て、自分の感情、怒り、そして力をありのままに受け入れた時だった。
その象徴が、クライマックスでヨン・ロッグに「素手で私と戦え」と挑発された場面だ。
彼女は、その土俵に乗らない。
ただ一言、「あなたに証明するものはない」と言い放ち、フォトン・ブラストで彼を吹き飛ばす。
このシーンは、男性的なルール(=素手の殴り合い)を拒否し、自らのルールで勝利するという、本作のテーマを象徴している。
ただ、この「圧倒的すぎる強さ」は、諸刃の剣でもある。
彼女が覚醒してからの戦闘は、もはや「戦い」ではなく「蹂躙」に近く、ドラマとしての緊張感は希薄になってしまった。
彼女が強すぎるがゆえに、観客が感情移入する「隙」が少ない、という批判も理解できる。
しかし、本作の目的は、ピンチを切り抜けるヒーローではなく、絶対的な力を持つヒーローが「なぜ戦うのか」という動機(=虐げられた者たちを救う)を描くことだったのだろう。
まとめ
本記事では、映画『キャプテン・マーベル』を、あらすじからネタバレ、トリビアに至るまで徹底的に解説してきた。
本作は、MCUファンにとっては必修科目であると同時に、90年代の空気が好きな人、そして「自分らしさ」に悩むすべての人に観てほしい。
彼女が教えてくれるのは、他人の決めたルールに縛られず、自分自身の力を信じて空を飛ぶことの素晴らしさだ。