映画『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』
あらすじ・ネタバレ・感想
SF映画の金字塔『猿の惑星』。なぜ猿が人間を支配するようになったのか?その起源を描く、衝撃の前日譚。
2011年に公開された『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』。
それは、人間のエゴによって知性を与えられた一匹の猿、シーザーの「覚醒」と「革命」を描いた、壮大なドラマである。
最新のモーションキャプチャー技術によって命を吹き込まれたシーザーの瞳は、言葉以上に雄弁に語りかける。
本記事では、あらすじからキャスト紹介、そして物語の核心に迫る完全ネタバレ解説まで、掘り下げていく。
1.映画『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の作品情報
| タイトル | 猿の惑星:創世記(ジェネシス)(Rise of the Planet of the Apes) |
|---|---|
| 監督 | ルパート・ワイアット |
| 公開年 | 2011年 |
| キャスト | ジェームズ・フランコ, アンディ・サーキス, フリーダ・ピント, ジョン・リスゴー 他 |
| ジャンル | SF,ドラマ,アクション |
2.映画『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』のあらすじ
サンフランシスコの製薬会社ジェネシス社で、アルツハイマー病の新薬「ALZ-112」の開発が進められていた。
研究員のウィル・ロッドマンは、実験体のチンパンジーが高い知能を示したことに希望を持つが、そのチンパンジーが突如暴れ出し、射殺されるという事件が発生。研究は中止に追い込まれる。
しかし、そのチンパンジーは妊娠しており、密かに赤ん坊を産み落としていた。ウィルはその赤ん坊を引き取り、「シーザー」と名付けて自宅で育てることにする。
母から薬の成分を受け継いだシーザーは、驚異的な知能を発揮し、ウィルやその父チャールズと家族のような絆を育んでいく。
時は流れ、成長したシーザーは外の世界への興味を抱くが、ある日、認知症のチャールズを脅かした隣人を襲ってしまい、霊長類保護施設へ送られることになる。
そこでシーザーを待っていたのは、劣悪な環境と飼育員からの虐待だった。人間への信頼を失い、絶望したシーザーは、施設内の猿たちを統率し、自由を求めて立ち上がる決意をする。
3.主要な登場人物とキャスト
- ウィル・ロッドマン(演:ジェームズ・フランコ)
主人公。アルツハイマー病に侵された父を救うため、新薬開発に没頭する科学者。シーザーを我が子のように愛するが、その愛が悲劇の引き金となる。
- シーザー(演:アンディ・サーキス)
高度な知能を持つチンパンジー。人間を信頼していたが、裏切りと虐待を経験し、猿たちのリーダーとして覚醒する。「モーションキャプチャーの神」アンディ・サーキスが演じる。
- チャールズ・ロッドマン(演:ジョン・リスゴー)
ウィルの父親。元音楽教師だがアルツハイマー病を患っている。シーザーにとっては優しい祖父のような存在。
- キャロライン・アランハ(演:フリーダ・ピント)
霊長類学者であり、ウィルの恋人。シーザーの成長を見守りながらも、彼を人間の環境に置くことへの懸念を抱く。
4.映画『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』のネタバレ
※ここからは映画の核心に触れるネタバレを含みます。
・覚醒と反乱
施設での虐待に耐えかねたシーザーは、人間の支配からの脱却を決意する。
彼はウィルの家から盗み出した、より強力な改良型ウイルス「ALZ-113」を施設内に散布し、仲間たちの知能を覚醒させる。
そして、飼育員ドッジが彼を制圧しようとしたその時、シーザーは初めて人間の言葉を発する。
「NO!(やめろ!)」
この一言が、革命の狼煙となった。シーザー率いる猿軍団は施設を脱出し、動物園の猿たちも解放して数を増やしていく。
・ゴールデン・ゲート・ブリッジの戦い
猿たちの群れは、安息の地であるミュアウッズ国定公園を目指し、ゴールデン・ゲート・ブリッジへと進撃する。
警察隊が封鎖線を敷く中、シーザーは高い知能と統率力で人間たちを翻弄。
無益な殺生を避けながらも、立ちはだかる敵を制圧し、ついに森へと到達する。
・別れ
森まで追いかけてきたウィルは、シーザーに「家に帰ろう」と呼びかける。
しかし、シーザーはウィルを抱き寄せ、耳元ではっきりとこう告げる。
「シーザーは、家にいる(Caesar is home)」
ウィルはシーザーの自立を悟り、彼を森へと見送る。二人の道はここで永遠に分かたれた。
・エンドロール:パンデミックの始まり
一方で、人間にとって致死性のウイルスである「ALZ-113」に感染した研究員が、パイロットとして空港へ向かっていた。
エンドロールでは、航空路線図を通じてウイルスが世界中に拡散していく様子が描かれる。
猿たちの創世記が始まった裏で、人類の滅亡へのカウントダウンが静かに幕を開けたのである。
5.映画『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の補足情報
アンディ・サーキスの神懸かった演技
『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラム役で知られるアンディ・サーキスが、シーザー役を演じた。
彼の繊細な表情や動きは、すべてモーションキャプチャー技術によってCGの猿へと変換されている。
アカデミー賞にノミネートされるべきだという声が上がるほど、その演技は絶賛された。
オリジナル版へのオマージュ
本作には、1968年のオリジナル版『猿の惑星』へのオマージュが多数散りばめられている。
シーザーが初めて発する言葉「NO!」は、オリジナル版で人間が猿に対して放つ象徴的なセリフと対になっている。
また、テレビに映る宇宙船のニュースは、オリジナル版の主人公テイラー大佐たちが旅立ったことを示唆している。
「ALZ-113」の皮肉な性質
物語の鍵となるウイルス「ALZ-113」は、猿にとっては知能を向上させる特効薬だが、人間にとっては致死性の病原体となる。
この設定が、猿の進化と人類の衰退を同時に説明する見事なプロットデバイスとなっている。
6.映画『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』の感想
この映画の主役は、間違いなくシーザーだ。
彼が窓から外の世界を眺める瞳の切なさ、愛する人を守ろうとする必死さ、そして裏切られた時の絶望。
セリフがほとんどないにも関わらず、私たちはシーザーの感情の揺らぎを痛いほど感じ取ることができる。
ウィルとの別れのシーンは、映画史に残る名場面だ。
「ペット」から「対等な存在」へ、そして「別の種族のリーダー」へ。
シーザーの成長と自立は、親離れのメタファーであると同時に、取り返しのつかない断絶の始まりでもある。
人間側のエゴが招いた結末ではあるが、そこに勧善懲悪の単純さはなく、ただ種としての生存競争の悲哀が漂う。
アクション映画としての興奮と、重厚なドラマが見事に融合した傑作だ。
まとめ
本記事では、映画『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』を、あらすじからネタバレ、トリビアに至るまで徹底的に解説してきた。
この映画は、知性を得た猿の孤独と闘いを通して、人間の業と、自由の尊さを描いている。
シーザーが選んだ道は、人類にとっては悪夢の始まりだが、彼らにとっては希望の夜明けなのだ。