映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』
あらすじ・ネタバレ・感想
「猿は、もはや人間になりたくない」
リブート版『猿の惑星』トリロジーの完結編。
高度な知能を得た猿たちのリーダー、シーザーの伝説的な旅路が、ついに終焉を迎える。
2017年に公開された『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』。
家族を奪われたシーザーの個人的な復讐の旅と、種としての存亡をかけた人類との最終決戦を描いた、物語である。
憎しみに囚われそうになるシーザーは、指導者として、そして父として、最後に何を残すのか。
本記事では、あらすじからキャスト紹介、そして物語の核心に迫る完全ネタバレ解説まで、掘り下げていく。
1.映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』の作品情報
| タイトル | 猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー) (War for the Planet of the Apes) |
|---|---|
| 監督 | マット・リーヴス |
| 公開年 | 2017年 |
| キャスト | アンディ・サーキス, ウディ・ハレルソン, スティーヴ・ザーン, アミア・ミラー 他 |
| ジャンル | SF, アクション, ドラマ, 戦争 |
2.映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』のあらすじ
コバの反乱から2年。シーザー率いる猿の群れは森の奥深くに隠れ住んでいたが、米軍の特殊部隊「アルファ・オメガ」による執拗な攻撃を受けていた。
ある夜、冷酷非道な「大佐」率いる部隊がアジトを奇襲し、シーザーの妻と長男ブルーアイズを殺害する。
深い悲しみと怒りに飲まれたシーザーは、群れを安全な新天地へ向かわせる一方、自らは大佐への復讐を果たすため、たった一人で旅立つことを決意する。
そんな彼を放っておけない仲間たち、モーリス、ロケット、ルカが同行。
旅の途中、口がきけなくなった人間の少女ノバや、動物園出身の奇妙なチンパンジー「バッド・エイプ」と出会いながら、一行は大佐の拠点が待つ極寒の地へと向かう。
しかし、そこでシーザーが見たものは、捕らえられ強制労働させられている仲間たちの姿だった。
3.主要な登場人物とキャスト
- シーザー(演:アンディ・サーキス)
猿たちのリーダー。家族を奪われたことで、かつて否定したコバのような憎しみに囚われそうになり、指導者としての責務と個人的な復讐心の間で葛藤する。
- 大佐(演:ウディ・ハレルソン)
アルファ・オメガ部隊を率いる狂信的な指揮官。人類の存続のためには、猿を根絶やしにし、退化した人間さえも切り捨てる必要があると信じている。
- バッド・エイプ(演:スティーヴ・ザーン)
動物園出身のチンパンジー。言葉を話せるが、群れを知らず孤独に生きてきた。コミカルだが、重要な助っ人となる。
- ノバ(演:アミア・ミラー)
旅の途中で拾われた人間の少女。ウイルスの変異により言葉を話せない。猿たちに対しても純粋な心で接し、シーザーの心に人間性を思い出させる。
- モーリス(演:カリン・コノヴァル)
オランウータンで、シーザーの最も古くからの友であり良き理解者。常に冷静で、シーザーが道を踏み外さないよう支える。
4.映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』のネタバレ
※ここからは映画の核心に触れるネタバレを含みます。
・ウイルスの変異と大佐の真意
シーザーは大佐の基地に潜入するが捕まり、仲間と共に強制労働させられる。
大佐との対話で、シーザーは恐るべき事実を知る。
猿インフルエンザ・ウイルスが変異し、感染した人間から「知性と言語」を奪い、退化させているのだ。
大佐は、感染した自分の息子さえも殺害し、感染拡大を防ぐために「聖戦」を行っていた。
北から迫る正規軍は、そんな大佐を粛清するために来ていたのだ。
・大脱走と雪崩
シーザーたちは地下通路を使って仲間を脱出させる計画を実行する。
基地が正規軍の攻撃を受ける中、シーザーは大佐の部屋へ向かうが、大佐は既に変異ウイルスに感染し、言葉を失っていた。
シーザーは彼を殺さず、大佐は自ら命を絶つ。
シーザーは燃料タンクを爆破して基地を壊滅させるが、その爆発が引き金となり、巨大な雪崩が発生。
人間たちの軍隊は全て雪に飲み込まれ、木の上に逃げた猿たちだけが生き残る。
・約束の地、そして伝説へ
生き残った猿たちは、長い旅の果てに緑豊かな「約束の地」へとたどり着く。
仲間たちが平和な新生活を始めるのを見届けながら、戦いで致命傷を負っていたシーザーは、静かに息を引き取る。
モーリスは彼に告げる。「息子は知るだろう。父が何をしたのかを」。
シーザーの死と共に、猿たちの新たな時代が幕を開ける。
5.映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』の補足情報
モーセの「出エジプト記」
本作のストーリーは、旧約聖書の「出エジプト記」をモチーフにしている。
虐げられた民(猿)を率いて、苦難の旅を経て約束の地へと導き、自らはその地に入ることなくこの世を去るシーザーの姿は、預言者モーセそのものである。
アンディ・サーキスの集大成
『創世記』からシーザーを演じ続けてきたアンディ・サーキスの演技は、本作で頂点に達した。
表情、呼吸、佇まい、すべてがリアルで感情豊かであり、「なぜ彼にアカデミー賞を与えないのか」という議論が再燃するほどの名演だった。
ノバの名前の意味
少女に名付けられた「ノバ」という名前は、1968年のオリジナル版『猿の惑星』でチャールトン・ヘストン演じる主人公が出会う、言葉を話せない人間の女性と同じ名前である。
本作のノバが彼女の幼少期なのか、あるいはその名の由来となったのか、シリーズの繋がりを感じさせる粋な演出となっている。
6.映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』の感想
トリロジーの完結編として、これ以上ないほど完璧で、美しい幕引きだ。
本作はSFアクションというよりも、西部劇や神話に近い重厚さを持っている。
復讐に囚われ、コバの幻影に苦しむシーザーの姿は痛々しく、だからこそ、最後に彼が憎しみを超えて仲間を導く姿に涙が止まらない。
ウディ・ハレルソン演じる大佐も、単なる悪役ではない。
彼もまた、人類という種を守るために人間性を捨てざるを得なかった悲劇のリーダーだ。
シーザーと大佐、二人のリーダーの対比が、戦争の虚しさを浮き彫りにする。
シーザーが最後に見た景色は、彼が命を懸けて守り抜いた「未来」そのものだった。
一匹の猿が知性を持ち、愛を知り、戦い、そして伝説になる。
映画史に残る、偉大な主人公の生涯を見届けられたことに感謝したい。
まとめ
本記事では、映画『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』を、あらすじからネタバレ、トリビアに至るまで徹底的に解説してきた。
この映画は、シーザーという一人の「英雄」の旅路の終着点であり、猿の惑星の歴史における最も重要な転換点を描いている。
彼の遺志は、次なる世代へと受け継がれていくのだ。