映画『ミッドサマー』
あらすじ・ネタバレ・感想

映画『ミッドサマー』のポスター。花冠をかぶり、涙を流しながらも微笑むダニーの顔のアップ

画像引用元: IMDb

スウェーデンの奥地で、90年に一度開かれるという夏至祭。
太陽が沈まない白夜の村で、美しい花々と笑顔の村人たちに囲まれた楽園のような場所が舞台。

2019年に公開されたミッドサマーは、ヘレディタリー/継承 のアリ・アスター監督が贈る、明るい日差しの中で繰り広げられる悪夢のようなフェスティバル・スリラーである。

家族を失った深いトラウマを抱える大学生ダニーと、彼女との関係に悩む恋人クリスチャン。
彼らが訪れたホルガ村で目撃する、常軌を逸した儀式の数々。

本記事では、あらすじからキャスト紹介、そして物語の核心に迫る完全ネタバレ解説まで、掘り下げていく。

1.映画『ミッドサマー』の作品情報


白い民族衣装を着て、草原で踊る村人たちとダニーたち

画像引用元: IMDb

タイトル ミッドサマー
(Midsommar)
監督 アリ・アスター
公開年 2019年(日本公開2020年)
キャスト フローレンス・ピュー, ジャック・レイナー, ウィリアム・ジャクソン・ハーパー, ウィル・ポールター 他
ジャンル ホラー, スリラー, ドラマ

2.映画『ミッドサマー』のあらすじ


大学生のダニーは、躁鬱病の妹が両親を道連れに無理心中したことで、天涯孤独となり深い悲しみに暮れていた。

一方、ダニーの恋人クリスチャンは、精神的に不安定な彼女との関係に疲れ果て、別れを切り出せずにいた。
そんな中、クリスチャンは友人のペレから、彼の故郷スウェーデンのホルガ村で90年に一度開催される夏至祭に誘われる。

気晴らしのためにダニーも同行することになり、クリスチャン、ペレ、そして友人のジョシュ、マークと共にスウェーデンへ向かう。
美しい自然と白夜の太陽、そして白い民族衣装に身を包んだ村人たちに歓迎される一行。

しかし、牧歌的に見えたその楽園は、独自の倫理観と狂気的な信仰に支配されたカルト集団の村だった。
ドラッグによる幻覚、異様な儀式、そして次々と姿を消していく友人たち。ダニーたちは逃れられない悪夢へと引きずり込まれていく。

3.主要な登場人物とキャスト


  • ダニー・アードール(演:フローレンス・ピュー)

    花冠を被り、呆然とした表情で立ち尽くすダニー

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    主人公。家族を失ったトラウマと、恋人への依存心に苦しむ。ホルガ村での体験を通じて、次第に村の狂気に共鳴し、新たな家族を見出していく。

  • クリスチャン・ヒューズ(演:ジャック・レイナー)

    困惑した表情で村の儀式を見つめるクリスチャン

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    ダニーの恋人。優柔不断で、ダニーと別れたがっているが言い出せない。人類学を専攻しており、ホルガ村の文化を論文のテーマにしようと目論む。

  • ペレ(演:ヴィルヘルム・ブロングレン)

    優しげな笑顔でスケッチブックに絵を描くペレ

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    ホルガ村出身の留学生。ダニーたちを村へ招待した張本人。常に穏やかで親切だが、その裏には村の繁栄のための恐ろしい目的がある。

  • ジョシュ(演:ウィリアム・ジャクソン・ハーパー)

    村の聖典に興味を示し、熱心に調査するジョシュ

    画像引用元: IMDb

    クリスチャンの友人。知的好奇心が旺盛で、ホルガ村の儀式について学術的に調査しようとするが、村のタブーに触れてしまう。

  • マーク(演:ウィル・ポールター)

    無神経な発言を繰り返す、お調子者のマーク

    画像引用元: IMDb

    クリスチャンの友人。女好きでお調子者。村の神聖な場所で粗相をしてしまい、村人たちの怒りを買う。

4.映画『ミッドサマー』のネタバレ

※ここからは物語の核心に触れるネタバレを含みます。

・アッテストゥパン(崖からの投身)

祭りの初日、ダニーたちは72歳を迎えた男女が崖から飛び降りて自ら命を絶つ儀式アッテストゥパンを目撃する。
死にきれなかった老人の頭部を村人が木槌で砕く凄惨な光景に、ダニーたちはパニックに陥るが、ペレたちは「これは人生のサイクルにおける名誉ある終わりだ」と説く。

・仲間たちの失踪

ロンドンから来たカップル、サイモンとコニーは儀式に耐えられず帰ろうとするが、行方不明になる。
マークは神聖な祖先の木に放尿した報復として、顔の皮を剥がれて殺される。
ジョシュは村の聖典を盗み見ようとして、皮を被った男に殴り殺される。
クリスチャンは友人たちの失踪を不審に思いつつも、論文のために村に残ることを選ぶ。

・メイクイーンと交配の儀式

ダニーは村の女性たちと共にダンスコンテストに参加し、トランス状態で踊り続け、見事優勝してメイクイーンに選ばれる。
一方、クリスチャンは薬を盛られ、村の少女マヤとの子作りの儀式に参加させられる。
裸の女性たちに囲まれ、奇妙な声援の中で行為に及ぶクリスチャン。
その様子を目撃してしまったダニーは絶叫し、過呼吸に陥るが、村の女性たちは彼女と共に叫び、痛みを共有する。

・最後の生贄と炎の浄化

祭りのフィナーレは、9つの生贄を捧げる儀式だった。
4人は村人から、2人は既に殺されたサイモンとコニー、2人はジョシュとマーク。
そして最後の1人は、メイクイーンであるダニーが選ぶことになった。
ダニーは、麻痺状態で車椅子に乗せられたクリスチャンを選ぶ。

クリスチャンは熊の毛皮の中に詰め込まれ、黄色い三角屋根の神殿に運び込まれる。
神殿に火が放たれ、クリスチャンや他の生贄たちが炎に包まれる中、燃え盛る神殿を見つめるダニーの顔から悲しみが消え、最後には満面の笑みが浮かぶ。
彼女は過去の家族と決別し、ホルガ村という狂気だが共感してくれる新たな家族を手に入れたのだった。

5.映画『ミッドサマー』の補足情報

アリ・アスター監督の失恋体験

監督のアリ・アスターは、自身の酷い失恋の経験を元にこの脚本を執筆した。

彼は本作をホラー映画ではなく、機能不全に陥ったカップルが終わりを迎える失恋映画であり、ダニーにとってのハッピーエンドを描いたと語っている。

緻密な伏線とルーン文字

映画の至る所に、後の展開を暗示する壁画やタペストリー、ルーン文字が散りばめられている。

オープニングの絵画には物語の結末までの全てが描かれており、キャラクターの衣装に刺繍されたルーン文字にもそれぞれの運命が示されている。

明るい恐怖

ホラー映画といえば闇や夜が定番だが、本作は白夜のスウェーデンを舞台にしているため、ほぼ全編が明るい日光の下で進行する。

隠れる場所のない明るさの中で行われる惨劇が、逃げ場のない閉塞感と異常さを際立たせている。

6.映画『ミッドサマー』の感想

胸糞悪いし、気持ち悪いのに、美しいという矛盾した感情に支配される映画だった。
画面いっぱいに広がる色とりどりの花々や、白い衣装の村人たちの映像美は圧巻だが、そこで行われていることは生理的嫌悪感を催すほどグロテスクだった。

しかし、物語が進むにつれて、主人公ダニーに感情移入してしまう自分がいることに気づいた。
恋人にも理解されず、孤独だった彼女が、村人たちに泣き叫ぶ声を共有してもらい、受け入れられていく過程は、ある種のセラピーのようにも見えた。

ラストシーンのダニーの笑顔は、狂気への転落であると同時に、呪縛からの解放でもあると感じた。
見終わった後、得体の知れない爽快感と、倫理的な居心地の悪さが同時に襲ってくる。
一度見たら脳裏に焼き付いて離れない、中毒性の高いホラーだと思った。

まとめ

本記事では、映画『ミッドサマー』を、あらすじからネタバレ、トリビアに至るまで徹底的に解説してきた。

この映画は、共感と狂気は紙一重であること、そして関係の破綻と再生を、悪夢として描いている。

もしあなたが傷ついているなら、ホルガ村は優しく迎え入れてくれるかもしれない。ただし、代償は命。