映画『メメント』
あらすじ・ネタバレ・小ネタ徹底解説
ある日突然、自宅に押し入った暴漢に妻を強姦され、殺害されたレナード。
彼自身も頭部を強打され、その衝撃で前向性健忘という記憶障害を患ってしまう。
2000年に公開された『メメント』は、クリストファー・ノーラン監督の名を一躍世界に知らしめたサイコ・サスペンスの傑作である。
新しい記憶を10分間しか保てないレナードは、ポラロイド写真にメモを書き込み、体に重要な情報をタトゥーとして刻むことで記憶を繋ぎ止め、犯人ジョン・Gへの復讐を誓う。
物語は結末から始まり、時間を遡るように展開していく。
1.映画『メメント』の作品情報
| タイトル | メメント (Memento) |
|---|---|
| 監督 | クリストファー・ノーラン |
| 公開年 | 2000年(日本公開2001年) |
| キャスト | ガイ・ピアース, キャリー=アン・モス, ジョー・パントリアーノ, スティーヴン・トボロウスキー 他 |
| ジャンル | サスペンス, スリラー, ミステリー |
2.映画『メメント』のあらすじ
物語は、レナードがある男(テディ)を殺害し、その現場写真をポラロイドカメラで撮影するシーンから逆再生で幕を開ける。
元保険調査員のレナードは、愛する妻を殺され、自らも頭部外傷による前向性健忘を患っていた。
新しい記憶は数分~10分程度しか維持できず、時間が経つと直前の出来事を全て忘れてしまう。
彼の手がかりは、常に持ち歩くポラロイド写真とメモ、そして体に彫り込んだタトゥーだけ。
タトゥーには「JOHN G. RAPPED AND MURDERED MY WIFE(ジョン・Gが妻をレイプし殺した)」「FIND HIM AND KILL
HIM(彼を見つけ出し殺せ)」と刻まれている。
レナードは、協力者と名乗る男テディや、バーで働く女ナタリーの助けを借りながら、犯人ジョン・Gへと近づいていく。
しかし、記憶が保てない彼にとって、誰が味方で誰が敵なのか、確かなものは何一つなかった。
3.主要な登場人物とキャスト
- レナード・シェルビー(演:ガイ・ピアース)
主人公。高級スーツを着込み、ジャガーを乗り回すが、記憶障害のためモーテル暮らしをしている。復讐だけを生きがいにしているが、その記憶自体がどこまで真実なのかは不明。
- ナタリー(演:キャリー=アン・モス)
レナードが出会うバーの店員。恋人ジミーが行方不明になっており、レナードに協力するふりをして近づく。レナードの記憶障害を利用する狡猾な一面も。
- テディ(演:ジョー・パントリアーノ)
レナードの友人を自称する男。本名はジョン・エドワード・ガンメル。レナードの復讐を手助けしているように見えるが、ナタリーからは信用するなと警告されている。
- サミー・ジャンキス(演:スティーヴン・トボロウスキー)
レナードが保険調査員時代に担当した顧客。レナードと同じ記憶障害を患い、妻にインスリンを過剰投与して死なせてしまった過去を持つとされる人物。レナードの教訓として語られる。
4.映画『メメント』のネタバレ
※ここからは物語の核心に触れるネタバレを含みます。
・テディの正体と真実
物語の時系列における最後にあたるシーン(映画の冒頭)で、レナードはテディをジョン・Gとして殺害する。
しかし、時間を遡っていくと、衝撃の事実が明らかになる。
テディは汚職警官であり、レナードを利用して麻薬ディーラーのジミー(ナタリーの恋人)を殺させ、金を奪おうとしていただけだった。
・サミー・ジャンキスは存在しない?
テディはレナードに告げる。「お前はもう復讐を終えている」と。
実はレナードの妻は襲撃では死んでおらず、事件後も生きていた。
しかし、記憶障害になったレナードは妻の糖尿病のインスリン注射の時間を覚えられず、何度も注射を打って妻を死なせてしまったのだ。
レナードが語り続けていたサミー・ジャンキスの話は、自分自身の罪悪感から逃れるために作り出した、記憶のすり替えだった。
・終わらない復讐
テディによると、レナードは1年以上前に本物の犯人をすでに見つけ出し、殺害していた。
その証拠写真も撮ったが、レナードは生きる目的を失わないために、その記憶をあえて消し去っていた。
真実を告げられたレナードは、それを受け入れることを拒絶する。
彼はテディの車のナンバーを犯人の手がかりとして自分の体にタトゥーとして彫ることを決意し、テディを次のターゲットに設定する。
・自己完結するループ
レナードは自らの意志で嘘の情報を記録し、未来の自分を騙す道を選んだ。
「自分の外の世界を信じたい」と言いながら、彼は自分だけの閉じた世界で、終わりのない復讐劇を繰り返していくのだった。
5.映画『メメント』の補足情報・小ネタ解説
カラーとモノクロの法則
本作はカラー映像とモノクロ映像が交互に描かれる構成になっている。
カラーパート: 時間軸が現在から過去へ逆行していく(レナードの主観)。
モノクロパート: 時間軸が過去から未来へ順行していく(電話で話すレナードの客観的視点)。
この2つの流れが物語の終盤で交差し、カラー映像へと統合される瞬間、すべての謎が繋がる仕組みになっている。
サブリミナル演出:サミーの正体
精神病院に入院しているサミー・ジャンキスを映したシーン。
彼の手前を誰かが横切った瞬間、ほんの数フレームだけ、椅子に座っている人物がサミーからレナードに入れ替わっている。
これは「サミーの話=レナードの実体験」であることを示唆する、決定的なサブリミナル演出である。
タトゥーの矛盾
レナードの体にあるタトゥー「I'VE DONE IT」は、実は物語の冒頭(時系列では最後)には存在しないことがある。
また、彼が妻の太ももをつねる回想シーンは、インスリン注射の記憶と混同されている可能性がある。
これらはレナードの記憶がいかに曖昧で、都合よく改変されているかを視覚的に表現している。
撮影期間はわずか25日
これほど複雑で完成度の高い作品だが、撮影期間はなんと25日間という短期間で行われた。
主演のガイ・ピアースは、この複雑な時系列を演じきるために、感情の流れを完璧にコントロールする必要があった。
クリストファー・ノーラン監督の弟ジョナサン・ノーランの短編小説『Memento Mori』が原案となっており、兄弟での脚本作りはこの作品から本格化した。
まとめ
本記事では、映画『メメント』を、あらすじからネタバレ、トリビアに至るまで徹底的に解説してきた。
記憶という不確かなものを信じ、それを記録することで自分を保とうとした男の悲劇。
この映画を見終わった後、あなた自身の記憶さえも疑いたくなるかもしれない。真実は、記録されたものの中にはないのだから。