映画『アメリカン・スナイパー』
あらすじ・ネタバレ・小ネタ解説

映画『アメリカン・スナイパー』の画像

画像引用元: IMDb

2014年に公開された『アメリカン・スナイパー』は、巨匠クリント・イーストウッド監督、ブラッドリー・クーパー主演による戦争ドラマの傑作である。

米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの狙撃手としてイラク戦争に派遣され、公式記録で160人以上の敵を射殺して「レジェンド」と畏怖された実在の人物、クリス・カイルの自伝を映画化している。

極限状態の戦場で祖国と仲間を守るために引き金を引き続ける男の過酷な体験と、帰還後に彼を苛む重度のPTSD、そして愛する家族との葛藤をリアルに描く。

戦争の狂気と、ひとりの兵士の抱える癒えない傷を浮き彫りにした本作は、世界中で大きな議論と感動を呼んだ。

1.映画『アメリカン・スナイパー』の作品情報

狙撃するクリス・カイル

画像引用元: IMDb

タイトル アメリカン・スナイパー
(American Sniper)
監督 クリント・イーストウッド
公開年 2014年(日本公開は2015年)
キャスト ブラッドリー・クーパー, シエナ・ミラー, ルーク・グライムス, ジェイク・マクドーマン, サミー・シェイク 他
ジャンル 戦争, ドラマ, アクション

2.映画『アメリカン・スナイパー』のあらすじ

テキサス州でロデオ・カウボーイとして生きていた青年クリス・カイルは、1998年のアメリカ大使館爆破事件をきっかけに祖国を守る決意を固め、30歳で海軍特殊部隊ネイビー・シールズに入隊する。

厳しい訓練を乗り越え、恋人タヤと結婚した直後、2001年の9.11同時多発テロが発生。クリスはイラク戦争へと派遣されることになる。

戦場での彼の任務は、建物の屋上から海兵隊員たちを狙撃の脅威から守ること。彼は類まれな狙撃の腕前を発揮し、数多くの敵を倒して味方の命を救い、レジェンドと呼ばれるようになる。

しかし、その一方で敵のアルカイダ系武装勢力からは多額の懸賞金をかけられ、さらには元オリンピック選手のシリア人凄腕スナイパー「ムスタファ」との死闘に巻き込まれていく。

計4回にも及ぶイラク派遣の中で、仲間は次々と命を落とし、戦場の狂気はクリスの精神を確実に蝕んでいく。祖国と家族の間で引き裂かれる兵士の魂の行方とは。

3.主要な登場人物とキャスト

4.映画『アメリカン・スナイパー』のネタバレ

※ここからは物語の核心に触れるネタバレを含みます。

最初の狙撃と戦場の現実
2001年の9.11同時多発テロをきっかけに愛国心に目覚めたクリスは、厳しい訓練を経てネイビー・シールズの狙撃手となる。妻タヤとの結婚直後、イラクのファルージャへ派兵される。彼が戦場で初めて射殺したのは、対戦車手榴弾(RKG-3)を米軍の車列に向かって投げようとしたイラク人の少年と、その母親であった。仲間を守るための決断であったが、クリスはその重い事実に苦悩する。

宿敵ムスタファとの死闘と仲間の死
アルカイダの残党を追う中、米軍は元オリンピック射撃選手のシリア人凄腕スナイパー「ムスタファ」と、アルカイダの幹部「虐殺者(ザ・ブッチャー)」に苦しめられる。度重なる派兵の中で、クリスは仲間であるマーク・リーや、顔面を撃たれたライアン・ビグルス・ジョブなど、親しい戦友たちを次々と失っていく。復讐心と使命感に取り憑かれたクリスは、家族の制止を振り切って4度目のイラク派遣へと向かう。

サドルシティでの1920メートルの奇跡
サドルシティでの作戦中、防護壁の建設を妨害するムスタファを発見したクリスは、1920メートルという絶望的な距離から狙撃を試みる。強風と砂塵の中、放たれた弾丸は見事ムスタファの頭部を撃ち抜く。しかし、その銃声によって敵の巨大な武装勢力に包囲されてしまう。猛烈な砂嵐が吹き荒れる中、弾薬も尽きかけたクリスは、命からがら装甲車に乗って撤退することに成功する。

PTSDからの回復と突然の悲劇的な結末
除隊してテキサスに帰還したクリスだが、心は戦場に置いたままで重度のPTSDに苦しむ。芝刈り機の音に怯え、パーティーで犬を殴り殺しそうになるなど精神の限界を迎えるが、退役軍人省の医師の勧めで、傷ついた帰還兵たちのリハビリ支援活動を始めることで徐々に人間らしさと家族の絆を取り戻していく。しかし2013年2月2日、PTSDを患う元海兵隊員エディー・レイ・ルースの支援のため射撃場へ向かったクリスは、彼によって突如射殺されてしまう。映画はクリスの実際の葬儀の映像と共に、静かに幕を閉じる。

5.映画『アメリカン・スナイパー』の補足情報・小ネタ解説

ブラッドリー・クーパーの過酷な役作り

ブラッドリー・クーパーはクリス・カイルになりきるため、約18キロもの過酷な筋肉増量を行った。1日8,000キロカロリーを摂取し、厳しいウェイトトレーニングと狙撃の訓練を積むことで、本物のシールズ隊員のような屈強な肉体と射撃フォームを手に入れた。

不自然な人形の赤ちゃん問題

劇中、クリスとタヤが赤ちゃんを抱きかかえるシーンで、明らかに作り物のプラスチック製の人形が使用されていることが公開当時大きな話題となった。これは撮影当日、本物の赤ちゃんが急病で出演できなくなり、イーストウッド監督が早撮りを優先して急遽人形を使用したためである。よく見ると、クーパーが自分の親指で人形の腕を動かしているのが分かる。

カイル本人の靴を着用

ブラッドリー・クーパーは役作りの一環として、クリス・カイル本人が実際に戦場で履いていたブーツを遺族から借り、撮影中ずっとそれを履いて演技に臨んでいた。彼の霊と共にあることを感じながら撮影を進めたという。

映画製作中のクリス・カイルの死

ブラッドリー・クーパーはもともと、クリス・カイル本人と連絡を取り合いながら映画化の準備を進めていた。しかし、脚本が完成し製作が本格化しようとした矢先に、クリス本人が射殺されるという痛ましい事件が発生。クーパーはこの映画を彼の遺族へのオマージュとして絶対に完成させることを誓ったという。

まとめ

本記事では、映画『アメリカン・スナイパー』を、あらすじから詳細なネタバレ、トリビアに至るまで解説してきた。

愛国心と家族への愛を胸に戦場へ赴いた男が、終わりのない戦争の中で精神をすり減らしていく過程を克明に描いた本作。

単なる英雄賛美でも反戦映画でもなく、一人の人間の光と影を映し出したクリント・イーストウッド監督の手腕が光る傑作である。

戦争の傷跡と、彼が残したレジェンドの重みを、ぜひ本編で体感してほしい。