映画『ユージュアル・サスペクツ』
あらすじ・ネタバレ・小ネタ解説
1995年に公開された『ユージュアル・サスペクツ』は、ブライアン・シンガー監督、クリストファー・マッカリー脚本によるサスペンス映画の金字塔である。
カリフォルニアの港で起きた麻薬密輸船の爆発事件。27名もの死者を出したこの事件で無傷で生き残った一人の詐欺師が、関税局捜査官の尋問に対して事件の全貌を語り始める。
6週間前、面通しのために集められた5人の前科者たちがいかにしてチームを組み、そして伝説のギャング「カイザー・ソゼ」の恐怖に巻き込まれていったのか。
巧妙に張り巡らされた伏線と、映画史に残る驚愕のどんでん返し。
観る者の予測を完全に裏切る緻密な脚本と、個性豊かな俳優陣のアンサンブルが見事に融合した本作は、サスペンス映画を語る上で欠かせない傑作として今なお語り継がれている。
1.映画『ユージュアル・サスペクツ』の作品情報
| タイトル | ユージュアル・サスペクツ (The Usual Suspects) |
|---|---|
| 監督 | ブライアン・シンガー |
| 公開年 | 1995年 |
| キャスト | ケヴィン・スペイシー, ガブリエル・バーン, チャズ・パルミンテリ, スティーヴン・ボールドウィン, ベニチオ・デル・トロ 他 |
| ジャンル | サスペンス, ミステリー, クライム |
2.映画『ユージュアル・サスペクツ』のあらすじ
カリフォルニア州サンペドロの港で、麻薬密輸船が爆発・炎上し、27人もの死者が発見される。
生き残ったのは、重度の火傷を負ったハンガリー人の船員と、左半身に麻痺を持つ小悪党の詐欺師ヴァーバル・キントの2人だけだった。
関税局捜査官のデヴィッド・クイヤンは、免責を条件にキントを尋問し、事件の背後に何があったのかを聞き出そうとする。
キントの語りは6週間前に遡る。銃器強奪事件の容疑者としてニューヨークの警察署で面通しのために集められた、面識のない5人の前科者(キートン、マクマナス、フェンスター、ホックニー、キント)。
彼らはこれを機に手を組み、汚職警官からエメラルドを奪う強盗を成功させる。
しかしその後、誰も顔を見たことがない伝説のギャング「カイザー・ソゼ」の右腕を名乗る弁護士コバヤシが現れ、彼らにサンペドロ港での危険な襲撃作戦を強要するのだった。
3.主要な登場人物とキャスト
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ヴァーバル・キント(演:ケヴィン・スペイシー)
主人公。左半身に軽い麻痺があり、足を引きずって歩く詐欺師。おしゃべり(ヴァーバル)の異名を持ち、クイヤン捜査官に事件の経緯を語る語り部となる。
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ディーン・キートン(演:ガブリエル・バーン)
元汚職警官で、現在は裏社会から足を洗って実業家になろうとしている。恋人の弁護士イーディのために真っ当に生きようとするが、再び犯罪に巻き込まれていく。
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デヴィッド・クイヤン(演:チャズ・パルミンテリ)
アメリカ関税局の特別捜査官。キートンが事件の主犯だと確信しており、キントを執拗に尋問してキートンの犯行を裏付ける証言を引き出そうとする。
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カイザー・ソゼ
裏社会でまことしやかに囁かれる伝説のギャング。かつて自分の家族を人質に取られた際、自らの手で家族を撃ち殺して敵を皆殺しにしたという恐ろしい武勇伝を持つ。誰もその素顔を知らない。
4.映画『ユージュアル・サスペクツ』のネタバレ
※ここからは物語の核心に触れるネタバレを含みます。
5人の容疑者たちはロサンゼルスに渡り、故買屋のレッドフットからの依頼で宝石強盗を行うが、中身は麻薬だった。
その後、伝説のギャング「カイザー・ソゼ」の代理人である弁護士コバヤシが現れ、彼らが過去に無意識のうちにソゼの仕事を妨害していたと告げる。
その罪滅ぼしとして、ライバル組織の麻薬密輸船を襲撃し、麻薬と現金を奪うよう命じられる。
フェンスターは逃亡を図るが殺され、残された4人はしぶしぶ作戦を実行する。
船に乗り込んだキートン、マクマナス、ホックニーの3人は次々と敵を倒すが、船内に麻薬は存在しなかった。
ソゼの真の目的は麻薬ではなく、自分の顔を知る唯一の人物(アルゼンチン人マフィアの密告者)を暗殺することだったのだ。
ホックニーとマクマナスは何者かに殺され、キートンも黒づくめの男(ソゼ)に撃たれる。離れた場所で隠れて見ていたキントは、ソゼが船に火を放ち、キートンを殺害したと証言する。
クイヤン捜査官は、全てはキートンが仕組んだ狂言であり、キートン自身がカイザー・ソゼの正体だと推理する。
キントを脅してその推理に同意させたクイヤンは、免責特権によりキントを釈放する。
キントが去った後、クイヤンは部屋の掲示板を何気なく見つめる。
そこにはレッドフット、コバヤシ(陶器のブランド名)など、キントの証言に登場した名前や地名が散りばめられていた。
キントの供述は、目に入った単語を繋ぎ合わせた完全なでっち上げだったのだ。
時を同じくして、病院で生き残ったハンガリー人の証言を基に描写したカイザー・ソゼの似顔絵がFAXで警察署に送られてくる。
そこには、キントの顔が描かれていた。
署を出て歩き出したキントは、徐々に引きずっていた足が正常な歩みへと変わり、麻痺していたはずの手でタバコに火をつける。
彼は迎えに来た車(運転手は「コバヤシ」と名乗っていた男)に乗り込み、悠然と姿を消す。
彼こそが真のカイザー・ソゼであったことが明かされる。
5.映画『ユージュアル・サスペクツ』の補足情報・小ネタ解説
面通しシーンの爆笑の裏側
5人が警察の面通しで一列に並び、指定されたセリフを言う有名なシーン。当初はシリアスなシーンの予定だったが、ベニチオ・デル・トロが意図的に何度もおならをしたため、笑いをこらえきれなくなったキャストたちが本当に吹き出してしまった。監督はその自然なテイクを採用した。
ケヴィン・スペイシーのアカデミー賞受賞
見事にヴァーバル・キント(=カイザー・ソゼ)を演じきったケヴィン・スペイシーは、本作で第68回アカデミー賞助演男優賞を受賞した。授賞式のスピーチで彼は「カイザー・ソゼは誰であれ、今夜は必ず酔っ払うでしょう」と語り、会場を沸かせた。
秀逸なタイトルとポスター
タイトルの「The Usual Suspects」は、「いつもの容疑者たち」という意味。映画『カサブランカ』の有名なセリフ「Round up the usual suspects(いつもの容疑者たちを引っ張ってこい)」から取られている。面通しで5人が並ぶポスターデザインも非常にアイコニックである。
脚本のクリストファー・マッカリー
本作の複雑で緻密な脚本を書き上げたクリストファー・マッカリーは、アカデミー賞脚本賞を受賞した。彼は後にトム・クルーズとタッグを組み、『ミッション:インポッシブル』シリーズの監督・脚本家として大成功を収めることになる。
監督の仕掛けたミスリード
ブライアン・シンガー監督は、撮影中、主要キャスト全員に対して「君がカイザー・ソゼだ」と密かに耳打ちしていたという。そのため、俳優たちはそれぞれ自分が黒幕だと思い込んで演技をしており、完成した映画を見るまで本当の正体を知らなかった者もいたと言われている。
まとめ
本記事では、映画『ユージュアル・サスペクツ』を、あらすじから詳細なネタバレ、トリビアに至るまで徹底解説してきた。
警察の尋問室という閉鎖空間で語られる回想録が、いかにして観客の目を欺くか。
最後に全てのパズルがカチリとハマる瞬間の鳥肌が立つようなカタルシスは、何度見ても色褪せない。
映画史に残る伝説の悪党の誕生と、完璧な騙し絵のようなミステリーの真髄を、ぜひ本編で体感してほしい。