映画『メッセージ』
あらすじ・ネタバレ解説
2016年に公開された『メッセージ(原題:Arrival)』は、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、エイミー・アダムス主演によるSF映画である。
テッド・チャンの短編小説『あなたの人生の物語』を原作とし、ある日突如として地球上の12ヶ所に飛来した巨大な殻のような宇宙船とのファースト・コンタクトを描く。
彼らは何のために地球へ来たのか? その目的を探るため、言語学者のルイーズは物理学者のイアンと共に、未知の知的生命体とコミュニケーションを図る任務に就く。
言語を解読していく過程で、ルイーズの脳裏には死を遂げた娘との記憶がフラッシュバックするようになる。
言語学という斬新な切り口で異星人との対話を描きながら、同時に時間と人生の選択という深く哲学的なテーマに踏み込んだ本作は、映画史に残る感動的なラストへと観客を導く。
1.映画『メッセージ』の作品情報
| タイトル | メッセージ (Arrival) |
|---|---|
| 監督 | ドゥニ・ヴィルヌーヴ |
| 公開年 | 2016年(日本公開は2017年) |
| キャスト | エイミー・アダムス, ジェレミー・レナー, フォレスト・ウィテカー, マイケル・スタールバーグ 他 |
| ジャンル | SF, ドラマ, ミステリー |
2.映画『メッセージ』のあらすじ
ある日、地球上の12の地点に、巨大な黒い殻のような飛行体が前触れもなく出現する。
彼らは攻撃を仕掛けてくるわけでもなく、ただ静かに空中に浮かんでいた。
アメリカ軍のウェバー大佐は、優れた言語学者のルイーズ・バンクスと物理学者のイアン・ドネリーを招集し、モンタナ州に降り立った宇宙船内での調査を依頼する。
彼らの任務は、重力を無視した空間の先でガラス越しに待ち受ける7本脚の異星人ヘプタポッドと対話し、地球に何をしに来たのか?という目的を問い詰めることだった。
ルイーズはホワイトボードを使い、視覚的なアプローチで彼らの言語を解読していく。
ヘプタポッドが空中に吐き出す円環状の墨のような文字のパターンを解析するうち、ルイーズは奇妙な記憶を見るようになる。
一方、一向に明確な答えを出さない異星人に対し、世界各国の軍隊(特に中国とロシア)は恐怖と焦りから攻撃の準備を始め、人類は世界大戦の危機に直面してしまう。
3.主要な登場人物とキャスト
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ルイーズ・バンクス(演:エイミー・アダムス)
主人公。優秀な言語学者。娘を若くして亡くした悲しい記憶を抱えている?ヘプタポッドの言語を理解していくにつれ、彼女の時間の認識に劇的な変化が起こる。
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イアン・ドネリー(演:ジェレミー・レナー)
理論物理学者。ルイーズと共にチームを組み、科学的な側面から宇宙船や彼らの文字の解析をサポートする。理系的でありながらユーモアと温かさを持ち、次第にルイーズと惹かれ合っていく。
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ウェバー大佐(演:フォレスト・ウィテカー)
アメリカ軍情報部の指揮官。上層部からのプレッシャーに晒されながらも、ルイーズたちの研究を見守る。しかし、世界情勢の悪化により強硬な決断を迫られる。
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ヘプタポッド(アボットとコステロ)
7本の触手を持つ巨大なタコやイカのような知的生命体。イアンによってアボットとコステロという愛称が付けられる。円形の文字を一瞬で描き出し、人類に大きなメッセージを伝えようとする。
4.映画『メッセージ』のネタバレ
※ここからは物語の核心に触れる決定的なネタバレを含みます。
ルイーズたちの必死の解読の末、ヘプタポッドが示した来訪の理由は「武器を提供する」というものだった。
この「武器」という言葉を武力・兵器と受け取った中国のシャン将軍は、彼らを侵略者と断定し、ロシア等と共に宇宙船への総攻撃を決定。
世界中の通信回線が遮断され、人類同士で対立が深まっていく。
しかし、ルイーズは彼らの言う武器とは、道具や言語という意味ではないかと推測する。
過激派の兵士が宇宙船内に爆弾を仕掛け、爆発からルイーズたちを庇ったアボットが致命傷を負う。
一人で再び船内に入ったルイーズは、コステロから直接真実を告げられる。
彼らが地球に来た理由は3000年後に人類の助けが必要になるからであり、その見返りとして今、人類に武器(彼らの言語)を与えに来たのだという。
ヘプタポッドの言語は、最初から最後までがひとつの円環として同時に書かれる非線形な言語である。
サピア=ウォーフの仮説(使う言語が認識を変える)の通り、彼らの言語を完全に理解したルイーズの脳は、過去・現在・未来を同時に認識できるようになった。
つまり、劇中何度も挿入されていた不治の病で死んでいく娘ハンナとの悲しい思い出は、過去の回想ではなくこれから起こる未来の出来事だったのだ。
中国の攻撃が数分後に迫る中、未来が見えるようになったルイーズは1年半後の祝賀会でシャン将軍と会話している未来の自分のビジョンを見る。
そこで将軍から聞いた亡き妻の最期の言葉と将軍の直通電話番号を現在の時間軸で利用し、衛星電話でシャン将軍に直接電話をかける。
妻の言葉を聞いた将軍は直前で攻撃を停止し、世界は協調へと向かい、ヘプタポッドたちは静かに地球から去っていく。
全てが終わった後、ルイーズはイアンから愛を告白される。
ルイーズは未来を知っている。
イアンと結ばれて娘ハンナが生まれること、ハンナが不治の病に冒されること、そしてその事実を知ったイアンが耐えきれずに家族を捨てて去っていくこと。
行き着く先が深い悲しみと別れであると知りながらも、彼女はそのプロセスを肯定し、イアンを抱きしめて未来を受け入れる決断をする。
5.映画『メッセージ』の補足情報・小ネタ解説
原作『あなたの人生の物語』
原作は、現代最高のSF作家の一人と呼ばれるテッド・チャンが1998年に発表した短編小説『あなたの人生の物語(Story of Your Life)』。映像化は絶対に不可能と言われていた複雑な構成の小説を見事に脚色したエリック・ハイセラーは、本作でアカデミー賞脚色賞を受賞した。
娘の名前「HANNAH」の秘密
ルイーズの娘の名前は「HANNAH(ハンナ)」。この名前は、前から読んでも後ろから読んでも同じになる回文である。これは始まりも終わりもない、円環構造を描くヘプタポッドの非線形な時間を象徴する重要なメタファーとなっている。
ヘプタポッドの言語デザイン
コーヒーの染みのような、書道のような美しい円環文字は、プロダクション・デザイナーのパトリス・ヴァーメットの妻であるアーティストが考案した。映画のために実際に100種類以上の論理的な文字体系がデザインされている。
スティーブン・ウルフラム親子による科学的考証
劇中に登場する異星人の恒星間航行や物理学的なアプローチ、また言語を解析するソフトウェアのコードなどは、計算ソフトウェアMathematicaの生みの親として知られる理論物理学者のスティーブン・ウルフラムとその息子クリストファーが監修している。彼らの高度な科学的考証によって、SFとしての圧倒的なリアリティがもたらされている。
音楽を担当したヨハン・ヨハンソン
不気味で重低音の効いたエイリアンとの遭遇を彩るサウンドトラックは、ヴィルヌーヴ監督の盟友であるヨハン・ヨハンソンが担当。また、オープニングとエンディングを飾る美しくも物悲しい楽曲は、マックス・リヒターの「On the Nature of Daylight」が使用されており、映画の感動を何倍にも引き上げている。
シャン将軍の妻の最期の言葉とは?
劇中、ルイーズが電話でシャン将軍に伝えた中国語のセリフには字幕がない。脚本家によれば、あの言葉は「戦争には勝者はいない。ただ未亡人が残されるだけだ(In war there are no winners, only widows.)」という意味であると明かされている。
まとめ
本記事では、映画『メッセージ』を、あらすじから詳細なネタバレ、トリビアに至るまで解説してきた。
ファースト・コンタクトというSFの王道を入り口にしながら、行き着く先は言語と時間、そして人生の選択という極めて深い物語である。
結末を知った上でもう一度最初から見直すと、全てのセリフや映像が全く違った意味を持って胸に迫ってくる。
映画史に輝くこの知的で美しい傑作を、ぜひ本編で体験してほしい。