映画『プリデスティネーション』
あらすじ・ネタバレ解説

映画『プリデスティネーション』の画像

画像引用元: IMDb

2014年に公開された『プリデスティネーション』は、マイケル&ピーター・スピエリッグ兄弟監督、イーサン・ホーク主演によるSFサスペンス映画である。

SF界の巨星ロバート・A・ハインラインの短編小説、輪廻の蛇を原作とし、連続爆弾魔フィズル・ボマーを追う時空警察の工作員の最後の任務から物語は始まる。

1970年のニューヨーク。

バーテンダーに扮した工作員は、未婚の母というペンネームで雑誌記事を書く青年ジョンと出会い、彼が女性として生まれ、過酷な運命を辿って男性になったという驚くべき半生を聞かされる。

「君の人生を台無しにした男を目の前に連れてきたら、殺すか?」

工作員のこの問いかけから始まる時空を超えた旅は、因果律とタイムパラドックスという深く哲学的なテーマに踏み込み、どんでん返しへと観客を導く。

1.映画『プリデスティネーション』の作品情報

時空を超える工作員

画像引用元: IMDb

タイトル プリデスティネーション
(Predestination)
監督 スピエリッグ兄弟(マイケル・スピエリッグ、ピーター・スピエリッグ)
公開年 2014年(日本公開は2015年)
キャスト イーサン・ホーク, サラ・スヌーク, ノア・テイラー 他
ジャンル SF, サスペンス, ミステリー

2.映画『プリデスティネーション』のあらすじ

1970年代のニューヨーク。1万人の死者を出すとされる連続爆弾魔フィズル・ボマーを阻止するため、タイムトラベル技術を持つ時空警察から一人の優秀な工作員が派遣される。

彼は過去の任務で爆発に巻き込まれ、顔の移植手術を受けたばかりだった。

バーテンダーとして潜入した彼は、そこで未婚の母というペンネームを持つ青年ジョンと出会う。

ジョンは自らの数奇な人生を語り始める。

彼は孤児院でジェーンという名の少女として育ち、宇宙飛行士を目指すも挫折。

その後、謎の男と恋に落ち妊娠するが、男は失踪してしまう。

出産時、彼女が男女両方の生殖器を持つ両性具有であることが発覚し、命を救うために男性への性別適合手術を余儀なくされた。

さらに産まれた赤ん坊は何者かに誘拐され、ジェーンは心身ともにボロボロになりながらジョンという男性として生きることを決意したのだ。

話を聞き終えたバーテンダーの工作員は、ジョンに「君の人生を狂わせたあの男に復讐させてやろう」と持ちかけ、二人で1963年の過去へとタイムトラベルを実行する。

3.主要な登場人物とキャスト

4.映画『プリデスティネーション』のネタバレ

※ここからは物語の核心に触れる決定的なネタバレを含みます。

工作員はジョンを1963年の過去へ連れて行く。

ジョンは、自分(ジェーン)を捨てた憎き男を殺すため大学のキャンパスを歩いていたが、そこで若き日のジェーンとぶつかってしまう。

ジェーンと会話を交わすうち、ジョンは彼女に恋をしてしまう。

そう、ジェーンを妊娠させて人生を狂わせた謎の男とは、未来からタイムトラベルしてきたジョン自身だったのだ。

ジェーンが身ごもって産んだ赤ん坊は、病院から何者かに誘拐された。

誘拐したのは他でもない工作員であった。

工作員は赤ん坊をタイムマシンで1945年に連れて行き、孤児院の前に置き去りにする。

つまり、孤児院で育ったジェーン(ジョン)は、自分自身が自分自身と交わって産まれた自分自身の子供だったのだ。

ジェーンを残して工作員に回収されたジョンは、時空警察にスカウトされ、過酷な任務をこなすうちに爆発事故で顔を失う。

そして手術を受けた後、バーテンダーの工作員としての顔を手に入れる。

つまり、ジェーン=ジョン=工作員は、すべて完全に同一人物が時間を巡って成長した姿だったのである。

すべての任務を終えた工作員は、1975年のニューヨークで引退生活に入る。

しかし、タイムトラベルの後遺症(精神の崩壊や認知症)により、彼は大規模なテロを防ぐために小規模な爆破テロを起こすという歪んだ正義感に取り憑かれてしまう。

コインランドリーで工作員が対峙した老齢のフィズル・ボマー、それこそが未来の自分自身であった。

工作員は未来の自分を射殺するが、それは彼自身がやがて狂気に陥り、フィズル・ボマーになる運命を決定づける行為だった。

彼は自分自身の母であり父であり娘であり息子であり、法であり犯罪者であるという、究極のタイムパラドックスの円環に閉じ込められていたのだ。

5.映画『プリデスティネーション』の補足情報・小ネタ解説

原作『輪廻の蛇』

本作の原作は、ロバート・A・ハインラインが1959年に執筆した短編小説『輪廻の蛇(原題:All You Zombies)』。わずか数ページの短編でありながら、タイムパラドックスの極北と称されるこの難解な原作を、スピエリッグ兄弟は見事に映像化してのけた。

タイトル「プリデスティネーション」の意味

原題のPredestinationとは、神学用語で予定説(あらかじめ運命は決められている)という意味を持つ。どれほど過去を変えようと足掻いても、結局は最初から決められた自分の運命の円環をなぞるだけだという、本作の残酷なテーマを見事に表している。

サラ・スヌークの驚異的な一人二役

ジェーンとジョンという非常に難しい役柄を見事に演じ切ったのは、オーストラリア出身の女優サラ・スヌーク。特殊メイクによる顔の骨格の変更や、男性的な歩き方、声のトーンの調整など、その圧倒的な演技力で本作の説得力を極限まで高めている。

ニワトリと卵のパラドックス

劇中のバーでニワトリが先か、卵が先か?という有名な問いかけが登場するが、これは主人公の存在そのものを暗喩している。自分自身から産まれ、自分自身を孕ませる主人公の存在は、まさに始まりも終わりもないニワトリと卵のタイムパラドックスの究極系である。

ウロボロスの指輪

ジョン(ジェーン)が指にはめているのは、自らの尻尾を噛む蛇ウロボロスの指輪である。これは永遠、無限、そして死と再生の円環を象徴しており、主人公が永遠に同じ人生のループを繰り返すことを暗示している。

まとめ

本記事では、映画『プリデスティネーション』を、あらすじから詳細なネタバレ、トリビアに至るまで解説してきた。

タイムトラベルものの極北とも言える本作は、複雑に絡み合った伏線がラストに向けて一気に収束していくカタルシスが最大の魅力である。

自分が自分の母であり、父であり、娘であり、息子である。そして自分を追うエージェントであり、自分が追う爆弾魔でもある。

結末を知った上でもう一度見直すと、全てのセリフや視線が全く違った意味を持って胸に迫ってくる。

映画史に燦然と輝くこの刺激的な傑作を、ぜひ本編で体験してほしい。