映画『ゲット・アウト』
あらすじ・ネタバレ解説

映画『ゲット・アウト』の画像

画像引用元: IMDb

2017年に公開された『ゲット・アウト』は、お笑いコンビ「キー&ピール」で知られるジョーダン・ピールの初監督作品であり、世界中で大絶賛された人種差別をテーマにした新感覚のスリラー映画である。

アフリカ系アメリカ人の青年クリスは、白人の恋人ローズの実家を初めて訪れる。

彼女の両親は彼を温かく迎え入れるが、クリスは邸宅の黒人使用人たちの不自然な振る舞いや、週末に開かれた奇妙なパーティーに違和感を抱き始める。

「何かがおかしい」。

その違和感は徐々に確信へと変わり、クリスはアーミテージ一家が隠し持つ恐るべき真実に直面することになる。

白人リベラル層に潜む無意識の偏見や差別をホラーの枠組みに見事に落とし込んだ本作。

伏線が随所に散りばめられた完璧な脚本は第90回アカデミー賞で脚本賞を受賞し、映画史に残るサスペンス・ホラーの傑作として観客をどんでん返しへと導く。

1.映画『ゲット・アウト』の作品情報

催眠術をかけられるクリス

画像引用元: IMDb

タイトル ゲット・アウト
(Get Out)
監督 ジョーダン・ピール
公開年 2017年
キャスト ダニエル・カルーヤ, アリソン・ウィリアムズ, キャサリン・キーナー, ブラッドリー・ウィットフォード, リル・レル・ハウリー 他
ジャンル スリラー, ホラー, ミステリー

2.映画『ゲット・アウト』のあらすじ

ニューヨークで写真家として活動する黒人青年クリス・ワシントンは、白人の恋人ローズ・アーミテージの週末の誘いを受け、彼女の実家へ挨拶に行くことになる。

自分が黒人であることを両親に伝えていないというローズにクリスは不安を抱くが、彼女は「私の両親はオバマに投票するくらいの人たちだから大丈夫」と彼を安心させる。

アーミテージ家の人々は、脳神経外科医の父ディーン、精神科医の母ミッシー、医学生の弟ジェレミーと、一見するとリベラルで歓迎的な白人家族だった。

しかし、クリスは屋敷で働く黒人の庭師ウォルターと家政婦のジョージナの、どこかロボットのような感情の欠落した不自然な態度に強い違和感を覚える。

その夜、クリスは眠れずに部屋を抜け出すが、母ミッシーに呼び止められ、半ば強引に催眠術をかけられてしまう。

彼は自らの意識が深く沈んでいく沈んだ沼という恐ろしい空間を体験する。

翌日、アーミテージ家で開かれた年に一度の親睦パーティーには、多くの白人の富裕層が集まっていた。

彼らはクリスの体格や才能を異様に褒め称える。

その中で唯一の黒人青年ローガンを見つけたクリスは安堵して話しかけるが、カメラのフラッシュを浴びたローガンは突然鼻血を流し、「ここから出ていけ!」とクリスに激しく襲い掛かるのだった。

3.主要な登場人物とキャスト

4.映画『ゲット・アウト』のネタバレ

※ここからは物語の核心に触れる決定的なネタバレを含みます。

パーティーの裏で行われていたのは、白人の老人や障害者がクリスの肉体を買い取るための無言のオークションだった。

アーミテージ家の真の目的は、身体能力や芸術的才能に優れた黒人を誘拐し、老いた白人の脳を移植して肉体を乗っ取る手術を行うことだった。

使用人のウォルターとジョージナの中身も、実は手術によって彼らの肉体を奪ったローズの祖父と祖母であった。

危機を察知したクリスはローズと共に実家から逃げ出そうとするが、ローズは車のキーを見つけられないフリをして時間を稼ぐ。

そして表情を一変させ、「キーは渡せないわ」と冷酷に告げる。

彼女は家族の共犯者であり、過去にも何十人もの黒人を恋人として実家に連れ込み、肉体の器として家族の知人に提供してきた恐るべきサイコパスだったのだ。

ミッシーの催眠術によって全身の自由を奪われ、地下室に拘束されたクリス。

彼は意識の奥底である沈んだ沼に幽閉されかけ、盲目の画家に肉体を乗っ取られる直前だった。

しかし、破れたソファーの綿で耳を塞ぎ、催眠の合図であるスプーンの音を遮断することに成功する。

拘束を解いたクリスは、ジェレミー、ディーン、ミッシーを次々と返り討ちにして狂気の館からの脱出を図る。

屋敷を逃げ出したクリスは、祖父が乗り移ったウォルターと、祖母が乗り移ったジョージナ、そして猟銃を持ったローズの追跡を受ける。

クリスは携帯電話のフラッシュをウォルターに浴びせ、彼の中に眠っていた元の人格を一瞬だけ呼び覚ます。

ウォルターはローズを撃ち、自らも命を絶つ。

重傷を負ったローズの横で絶望するクリスの前に、一台のパトカーが到着する。

警察に犯人にされるかと思われたが、そこから降りてきたのはTSAの車に乗った親友のロッドだった。

クリスはロッドの車に乗り込み、生還を果たす。

5.映画『ゲット・アウト』の補足情報・小ネタ解説

沈んだ沼のメタファー

クリスが落とされる沈んだ沼は、自分自身の体を他人に操られ、声を出しても誰にも届かないという恐怖の状態を表している。これは監督のジョーダン・ピールによれば、現代のアメリカ社会における黒人の抑圧された状況や、システムの中で声を奪われている状態の深いメタファーであるという。

ローズの食べるシリアルと牛乳

劇中の終盤、ローズが自室で色とりどりのシリアルを食べ、別のグラスに入った白い牛乳を飲むシーンがある。通常は混ぜて食べるものを別々にしているのは、「色付きのもの(有色人種)」と「白いもの(白人)」を絶対に混ぜないという、彼女の徹底した人種分離主義の異常な価値観を視覚的に表現している。

代替エンディングの存在

本作には、パトカーから降りてくるのがロッドではなく本物の地元警察であり、ローズを絞め殺そうとしていたクリスが殺人犯として誤認逮捕され、刑務所に収監されて終わるという絶望的な別エンディングが存在する。しかし、テスト試写で観客の反応が重すぎたため、希望のある現在のエンディングが採用された。

ビンゴゲームの意味

ローズがネットで黒人のターゲットを物色しているシーンで、アーミテージ家の壁にはビンゴのカードが貼られているのが見える。パーティーで行われた無言のオークションもビンゴの形式で行われており、彼らにとって黒人の命を奪うことは単なるゲームや娯楽に過ぎないという非道さを示している。

オバマ大統領の言及

ローズの父ディーンは、初対面のクリスに対して「オバマには3期目も投票したい」と強調する。これは、一見するとリベラルで偏見がないように見える白人層の中にも、黒人をトロフィーやステータスのように消費する「無自覚な差別」が潜んでいることを鋭く皮肉ったジョーダン・ピール流の名セリフである。

まとめ

本記事では、映画『ゲット・アウト』を、あらすじから詳細なネタバレ、トリビアに至るまで解説してきた。

人種差別という重い社会的テーマを、極上のエンターテインメント・スリラーへと昇華させた本作の功績は計り知れない。

劇中に散りばめられた伏線やメタファーは、見直すたびに新たな発見を与えてくれる。

結末を知った上でもう一度見直すと、全てのセリフや視線が全く違った意味を持って胸に迫ってくる。ぜひ本編で体験してほしい。